ある地方道路において、複数台の車両がゾウの群れによって立ち往生する事態が発生した。当初、運転手らは一時的な通行障害と考えていたが、現場に近づいたところ、道路を横断する形で静止していたゾウたちの姿を確認した。
現場では、ゾウたちは威嚇行動を取ることもなく、ただ一列に並び道路を封鎖。周囲の人々は手出しできず、距離を保って状況を見守っていた。群れの中には数頭の子ゾウも確認され、各個体は木のそばや側溝沿いに静かに佇んでいたという。
通報を受けて約2時間後、地元の野生動物保護当局のレンジャーが現地入り。レンジャーが群れに近づき、低い声で呼びかけながら慎重に接近したところ、1頭の老齢のゾウがわずかに身を引き、視界が開けた。
その際、道路脇の側溝にイボイノシシの子どもが倒れているのが発見された。動けない状態で、目立った外傷と脱水症状を呈しており、自力での脱出は困難とみられる。
ゾウの群れは、この子イボイノシシを保護するように道路を塞いでいたとみられ、接近を防ぐために意図的に陣形を取っていた可能性が指摘されている。
救助隊は迅速にロープと装備を使って救出作業を実施。付近にいたゾウたちは落ち着かない様子を見せつつも、終始攻撃的な行動を取ることはなかった。
救出後、群れは徐々に後退し、静かに森の奥へと戻っていった。子イボイノシシは軽度の打撲と脱水症状があったが、容体は安定しているという。専門家の見解では、夜間に側溝へ転落し、身動きが取れなくなった可能性が高いとされる。
ゾウが異種の動物をこのように保護する行動は極めて稀であり、動物行動学者らは「種を超えた共感行動の一例」として注目している。
なお、現場に居合わせた運転手の一人は、「ただの交通渋滞だと思ったが、これほど印象に残る瞬間はなかった」と語っている。