セレブと聞くと、華やかで悩みとは無縁の世界に生きているような印象を受ける。しかし、そんなスターたちも、ときには思いがけない失敗をしたり、気まずい場面に遭遇したりする。完璧に見える人であっても、日常のちょっとした失態から逃れられない。そんな瞬間を見ると、遠い存在だった有名人が、私たちと同じように戸惑い、恥ずかしい思いをする人間なのだと感じられる。
もっとも、一般の人と違って、セレブの失敗はカメラに記録され、瞬く間に世界中へ広まってしまう。映像が何度も再生されたり、ミームとして拡散されたりすることも珍しくない。一方で、こうした出来事がきっかけとなり、スターの人間味が伝わって親近感が増す場合もある。生放送でのハプニングから、思わず目をそらしたくなる勘違いまで、カメラが捉えた忘れがたい瞬間を振り返ってみよう。
エマ・チェンバレンとジャック・ハーロウの気まずい別れ際
2022年のメットガラで、ファッション誌『Vogue』のレッドカーペット取材を担当していたインフルエンサーのエマ・チェンバレンは、ラッパーのジャック・ハーロウと会話を交わした。取材が終わり、ハーロウが別れ際に愛情を込めた軽い挨拶をすると、チェンバレンも同じように返した。ところが、彼が立ち去った直後、彼女はカメラに向かって目を大きく見開き、何が起きたのか自分でも理解できないといった表情を浮かべ、思わず笑い出した。

この短いやり取りはたちまち話題になった。後日、ハーロウは『The Tonight Show』で、出来事の受け止め方は見る人に委ねたいという趣旨の説明をした。また、誰にでも同じような別れの挨拶をするわけではなく、相手に好意を持っている場合に限ると冗談交じりに語った。一方、チェンバレンも同番組で当時を振り返り、取材中は深く考えず、反射的に反応していたのだと明かした。何気ない一言を口にしたあと、自分の言動に驚いてしまう経験は、誰にでもあるものだ。
ティモシー・シャラメ、椅子ごと後ろに倒れる
ティモシー・シャラメは、飲み物をこぼしたり、授賞式でつまずいたりと、どこか人間味のあるハプニングでも知られている。そのなかでも特に印象的だったのが、2018年の質疑応答イベントで椅子にもたれかかった際、バランスを崩して後ろに倒れてしまった出来事だ。幸い大きなけがはなく、会場の観客も笑いに包まれた。

映画『君の名前で僕を呼んで』で注目を集めた彼は、後に『The Tonight Show』でこの一件を振り返った。本人によれば、座って話を聞いていたところ、突然何かに押されたかのように椅子ごと倒れてしまったという。実際の映像では、椅子を後ろに傾けすぎたようにも見えるが、原因を細かく追及する必要はないだろう。さらに彼を困らせたのは、その場に気になっていた女性がいたことだった。大勢の前で転ぶだけでも十分に恥ずかしいのに、特別な相手が見ていたとなれば、忘れたくても忘れられない出来事になりそうだ。
ドージャ・キャット、グラミー賞の受賞発表に間に合わない危機
2022年のグラミー賞で、ドージャ・キャットとSZAは楽曲「Kiss Me More」により最優秀ポップ・デュオ/グループ・パフォーマンス賞を受賞した。しかし、受賞の瞬間、ドージャ・キャットはトイレにいて、発表を聞いてすぐに会場へ戻らなければならなかった。松葉づえを使っていたSZAのほうが先にステージへ到着したため、ドージャは受賞の場面を逃しかねない状況に陥った。

ようやくマイクの前に着いた彼女は、人生でこれほど急いで用を足したことはないという趣旨の言葉で、遅れた理由を説明した。舞台裏でも、シャンパンを飲みすぎてトイレに行っていたところ、スタッフから受賞を知らされたと語っている。大切な瞬間を逃すところだったとはいえ、自然な生理現象は予定どおりに進んでくれるとは限らない。初めてのグラミー賞という晴れ舞台でさえ、例外ではなかったようだ。
ジョン・トラボルタがイディナ・メンゼルの名前を言い間違える
2014年のアカデミー賞で、ジョン・トラボルタは映画『アナと雪の女王』の楽曲「レット・イット・ゴー」を披露するイディナ・メンゼルを紹介する役目を担っていた。ところが、彼は彼女の名前を正しく発音できず、まったく別の名前に聞こえる紹介をしてしまった。この失態は大きな話題となり、パロディー画像や、名前を変換するジョークまで生まれた。

トラボルタは後にテレビ番組で、直前に変更されたカンペの発音表記が混乱の原因になったと説明した。当時、メンゼルは大きな舞台で名前を間違えられたことに落胆したという。しかし、時間がたつにつれて、この出来事を前向きに受け止められるようになった。トラボルタから謝罪のメールや花が届き、誠実な対応を受けたことも理由の一つだった。今では、あの失敗が自分にとって思いがけない追い風になったと考えている。たった一度の言い間違いが、本人のキャリアに予想外の影響を与えることもある。
アシュリー・シンプソン、生放送中に慌てて踊り出す
2004年当時、アシュリー・シンプソンは姉ジェシカ・シンプソンの人気も追い風に、自身の音楽活動を展開していた。テレビ番組『The Ashlee Simpson Show』や、ヒット曲「Pieces of Me」で注目され、人気番組『サタデー・ナイト・ライブ(SNL)』への出演も実現した。
最初の曲は問題なく進んだように見えたが、2曲目の「Autobiography」が始まるはずの場面で、再び「Pieces of Me」の音源が流れてしまった。視聴者は、最初の演奏も口パクだったのではないかと疑うことになり、シンプソン自身も予期せぬ事態に戸惑った様子だった。バンドが演奏を続けるなか、彼女はぎこちない動きを見せた後、ステージを離れた。カメラはしばらくバンドを映し、その後コマーシャルへ切り替わった。

番組の終盤、シンプソンは当初、バンド側に責任があるかのような説明をした。しかし翌週には、自分の対応が軽率であり、バンドのせいにしたことも間違いだったと認めた。生放送では、機材や進行のトラブルが一瞬で大きな問題に変わる。彼女の出演は、その難しさを象徴する出来事となった。
ライアン・シークレスト、ハイタッチに失敗
『アメリカン・アイドル』第8シーズンのオーディションに参加したスコット・マッキンタイアは、歌唱力を評価され、次の審査へ進むためのゴールデンチケットを獲得した。審査後のインタビューで、彼が今後の展開に期待していると話すと、司会者のライアン・シークレストはハイタッチをしようと手を伸ばした。
しかし、マッキンタイアは視覚に障害があり、その動きに気づかなかった。シークレストはすぐに状況を理解し、ハイタッチをしようとしていることを言葉で伝え、改めて彼の手に触れた。やり取りは成立したものの、テレビの前では少し気まずい場面となった。

それでも、2人はこの失敗を深刻に受け止めなかった。マッキンタイアはシーズン中に同じ場面を再現し、今度はうまくハイタッチを交わした。最終的には上位8人に残る活躍も見せている。後年、彼はシークレストが状況をごまかさず、言葉で説明してやり直した対応を評価した。気まずさを避けるために何もしないよりも、相手に伝わる方法を考えて行動することが大切だと分かるエピソードだ。
カニエ・ウェスト、テイラー・スウィフトからマイクを奪う
テイラー・スウィフトが初めてMTVビデオ・ミュージック・アワードを受賞した2009年、喜びのスピーチは思いがけない形で中断された。当時19歳だったスウィフトは、カントリー音楽の枠を越えて注目され始めていた。ところが、受賞コメントを話している最中にカニエ・ウェストがステージへ上がり、マイクを手に取った。
ウェストは、スウィフトの受賞を喜びながらも、ビヨンセのミュージックビデオこそ史上最高の作品の一つだという趣旨の発言をした。カメラは困惑した表情のビヨンセを映し、スウィフトは観客からブーイングが起こるなか、言葉を失って立ち尽くした。この一件は長年にわたって語り継がれ、2人のアーティストに対する世間の見方にも影響を与えたと考える人は少なくない。

その夜、ビヨンセが年間最優秀ビデオ賞を受賞すると、彼女はスウィフトをステージに招き、改めてスピーチをする機会を与えた。自分がデスティニーズ・チャイルドとして初めてMTVの賞にノミネートされたときの高揚感を思い出し、スウィフトにも同じような瞬間を経験してほしいと考えたのだ。騒動そのものは大きな衝撃を残したが、最後には別のアーティストの思いやりが印象に残る場面も生まれた。
ウィル・スミス、アカデミー賞でクリス・ロックを平手打ち
2022年のアカデミー賞では、授賞式の歴史に残る衝撃的な出来事が起きた。ドキュメンタリー長編賞の発表を前に、プレゼンターのクリス・ロックがジョークを披露し、そのなかでジェイダ・ピンケット・スミスに言及した。脱毛症を公表している彼女の外見を題材にした発言だったため、夫のウィル・スミスは当初こそ笑っているように見えたものの、すぐに態度を変えた。
スミスはステージへ歩み寄り、ロックの顔を平手打ちした。会場は一瞬で静まり返り、観客も何が起きたのか理解できない様子だった。席に戻ったスミスは、妻の名前を口にする際には慎重になるよう強い調子で要求した。ロックはその場を収めようとし、進行を続けようとしたものの、会場には張り詰めた空気が残った。

その夜、スミスは主演男優賞を受賞し、スピーチでは高い地位にあるときこそ慎重であるべきだという助言に触れた。その後、説明や謝罪を重ねたものの、騒動の影響は大きく、映画芸術科学アカデミーから10年間、アカデミー賞関連のイベントへの出席を禁止された。華やかな式典で起きたこの衝突は、感情的な行動が公の場でどれほど大きな結果を招くかを示す出来事となった。
ジェリー・サインフェルド、ケシャのハグを拒否
2017年、レッドカーペットでインタビューを受けていたコメディアンのジェリー・サインフェルドに、歌手のケシャが近づいた。彼女はサインフェルドの大ファンで、愛情を伝えたうえでハグを求めた。しかし、サインフェルドはその申し出を断り、再び求められても応じなかった。ケシャが距離を縮めようとすると、彼はさらに身を引き、見知らぬ相手とはハグをしないという姿勢を崩さなかった。
後にサインフェルドは、相手を知らない段階では身体的な親しさを示さないという自分なりの考えを説明した。テレビを通じて自分を知っている人がいても、それは本人同士が知り合いであることとは違うという趣旨だった。一方、ケシャは当初、拒まれたことを恥ずかしく感じたものの、後にはこの出来事を笑い話として振り返った。自分がコメディー番組『となりのサインフェルド』の一場面に入り込んだようだったと感じたという。

相手に親しみを感じていても、その距離感が必ずしも一致するとは限らない。気まずい場面ではあったが、2人がそれぞれの立場を示したことで、思わぬコメディーのような瞬間が生まれた。
アリアナ・グランデ、天使の羽に顔をぶつけられる
ヴィクトリアズ・シークレットのファッションショーでは、モデルたちが大きな天使の羽を背負ってランウェイを歩く演出が恒例となっていた。しかし、華やかな衣装の一部が、歌手のアリアナ・グランデにとって思いがけない危険となった。楽曲「Bang Bang」のパフォーマンス中、モデルのエルザ・ホスクが身につけていたピンク色の羽が、グランデの顔に当たってしまったのだ。彼女は体をかがめ、驚いたような表情を見せた。
グランデは後に、モデルの羽が顔に当たったことをユーモアたっぷりに投稿し、むしろ楽しい出来事だったという反応を示した。しかし、ステージ上での安全について考えるきっかけにもなった。モデルのライス・リベイロによれば、出演者同士がランウェイでぶつからないよう、互いに距離を保つことを確認する話し合いが行われたという。

ちょうど羽を避けようとするグランデの姿を捉えた写真は、ネット上で人気のミームとなった。恐竜から逃げる場面やサンタクロースの膝に座る場面など、さまざまな状況に合成され、本人の驚いた表情が幅広く使われた。偶然のハプニングが、イベントの華やかさとは対照的なネット上の定番ネタへと変わった例だ。
